フランス語のペアワーク

僕はフランス語の発音が苦手で、これはもう、才能がないと思う。

外国語の発音は練習すればうまくなると言う人もいるけど、僕はそうは思わない。耳のいい人は文法が分かっていなくても、ある程度基本語彙と発音のパターンを飲み込めば、驚くほどきれいな発音で話す。一方で、きれいな発音をしているからといって、その言葉に習熟しているとは限らない。中学生でも英語の発音のうまい子はいる。逆に、発音が悪いからといって語学力がないことにはならない。アメリカに来て驚いたのは、こちらで20年くらい住んでいるような人でもアクセントの取れないひとはいくらでもいるということだ。しかし、そういう人たちも日常使われるような語彙には通じているのでコミュニケーションに支障はないし、リスニングの力はまた別なので、人のいうことも理解できる。それにインド人の人たち!彼らのアクセントはまったく取れないんだけど、アメリカ人のほうがそれに慣れてしまっていて、実に堂々としている。彼らの英語は土の匂いがするようで、僕も好きだ。聞き取る時にやや緊張しながら言葉を拾わなきゃいけないのは確かだけど。

アメリカの語学の授業では、ペアワークというのをよくやらされる。これは、隣の人と何かのテーマについて、その日習った文法を使って話すというもの。

フランス語のクラスはだいたい8割くらい女の子で、20歳くらいの子が多い。フランス語がなにかおしゃれなイメージと結びついているのは、日本もアメリカも同じで、女の子たちはめいっぱいおしゃれをしてくるし、ちょっと気取っている。この辺は日本語のクラスと雰囲気がまったく逆である。この間、フランス語の授業のペアワークで隣の子と話していたら、僕が携帯電話を持っていないと言ったときに、めちゃめちゃ驚かれて気まずかったし、あと流行のテレビ番組のこととか、ファッションブランドなんかについてのこちらの無知がばれると、即座に「人間」の範囲外にカテゴライズされてしまう(というように、彼女たちの瞳は語っているように見える)。うーん、つらい。いや、日本にいた時だって、僕は一貫してテレビはほとんどつけないし、女性のファッションブランドなんて興味ないから無知だったんだけど、年を取ると、無知であることがある種の文脈に自動的に位置づけられてしまうような気がして、それがつらい。このようにして、男はいつの間にか「おっさん」になっている自分を発見するのかもしれない。大分話がずれてしまった。