Cary Nelson!

Office Hours: Activism and Change in the Academy

Office Hours: Activism and Change in the Academy

うちの大学の英文科の中でも圧倒的な存在感を誇るCary Nelson。今月下旬に彼へのTribute Conferenceが開かれます。Office Hoursは涙なしに読めないアメリカのhigher educationの労働条件についての徹底批判本。博士号を持っていなくても就職できる(こともある)日本の英文学界の事情から比べると、アメリカの就職事情はとてつもなく厳しい。Ph.Dをとっても、常勤で働くことが出来るようになるには相当の業績を上げなければいけない。Nelsonは、一度病気などで長期間はなれただけでも、大学に二度と雇ってもらえない、というあたりを指摘しているが、なるほどアカポスの労働条件は普通の企業職に比べてもずっとシビアなのだ。

特に第4章、ポスドクの必要性を訴えたところが実に泣ける。労働時間や給料など細かい数字まであげて、いかに大学が大学院生を搾取しているかを糾弾している。しかしこの点、日本の大学院はさらにずっとひどくて問題意識すら希薄である。基本的に学部生と同じただの学生として扱われ、大学の知的戦力のうちにはカウントされていないのだから。


それにしてもCary(女のような名前ですが男です)、ほんと、この人の左翼思想は生活全体を貫いているのだ。