先生とわたし

 四方田犬彦の本。ようやく読む。こうやっていつも流行に周回遅れになってしまうわけだけど、なかなか海外から新刊を取り寄せるのは、大変。この本は、数年前に帰ったときに話題になっていて、知り合いの先生があれは恩知らずの本だとか怒っていたのだけど、読了してみて、この本に対して怒るということがありえるという事実にむしろ身の毛のよだつような日本のアカデミズムの閉塞性を感じた。肝は、突然、「わたし」に加えられた先生の拳なわけだが、別にそれに対して恨みがましいようなことが書かれているわけではない。四方田も終始、敬意をこめて先生のことを描いているし。
 しかし、そんなことよりも、なんといっても文学が輝いていたころが描かれていてそれが印象的だった。まだ、新しいものが始まるという感覚が、70年代には確実にあったわけだ。僕自身は、文学を無前提にありがたがるという感覚はないけど。
 

論文はようやく書き始める。