松浦 多和田

あやめ 鰈 ひかがみ

あやめ 鰈 ひかがみ

三人関係

三人関係

ようやく、今学期も終了。心置きなく本が読める。

松浦寿輝「知の庭園」後半
「死体と去勢」 絵画における女の他者性がいかに露出されるか。
また、19世紀後半の「科学」の大衆化と、「巨大な女」の図像についての考察は面白かった。

しかし、続けて読んだ「あやめ、鰈、ひかがみ」は面白くない。
最初の中篇はまだしも。二番目、三番目はまったくいただけない。
小説の主人公がことごとく疲れ果てた中年男性であるという設定が、
小説において現実と虚構のあいだを描き出すための装置として働いているのであるが、
読者の方でも、主人公同様に、何がおきても驚かなくなってしまうのだ。
たとえば、最初の中篇でも、男はさっそく車に轢かれて死んでしまうわけだが、
あたかも何もなかったかのように東京の下町を徘徊している。そのことが不条理だと
いう感じが全くしない。よって、何の驚きもない。

多和田葉子「三人関係」
著者の日本語デビュー作、だが、これも今まで読んだ彼女の作品のなかで、一番ダメだった。
特に、表題作が。

「きつね月」も借りているので、もう少し読んでから考えたい。