身体

来学期、身体論をやるので予習をかねて。
とくに小林康夫「身体なき眼差しと世界の「肉」」が大変勉強になった。
Merleau=Pontyの「触れること」をめぐる卓抜な引用から始まって、そこに「死」をめぐる思考が不在であること、そうした点を補うのがハイデガーの役割であったことなどを説いていて、まあここまでは、ふんふん、と思って読んでいると、突然臨死体験における身体離脱という現象の照らし出す地平に向けて論が展開して、ここからが本番。「世界の眼差し」=「身体なき眼差し」という強烈なテーゼが生起する。「身体なき眼差し」、これはあまりに素晴らしい概念だ。実際、我々の住んでいる世界は「身体なき眼差し」で満ちているのではないか。あまりに大胆な立論なので、小林自身、自分の論が「まだ多くの謎を含」んでいることを認めているが、示唆に富んでいると思った。