ベートーベン 後期ソナタ

ここでも何回か書いたけど、ベートーベンの後期のピアノソナタ(28番以降)というのは、本当に神がかっていると思う。ここのところポップミュージックを中心に聞いていたんだけど、久しぶりにクラシックを聞こうと思って、後期ソナタ集を聴いたら、またはじめて聞いたような強烈な印象で、鳥肌が立った。クラシック音楽を敬して(あるいは馬鹿にして)遠ざけている人は、確実に人類の大切な文化遺産を逃していると思う。サイードが晩年に書いたベートーベンの晩年の作品についての感動的なエッセイがあるけど、そこで述べられていたことは本当に沁みるようによく分かる。サイードは、そこで晩年に至っても完成や円熟といった方向を目指さずに、最後の作品まで新たな境地を切り開く努力を惜しまなかったベートーベンをたたえているのだ。30番の第三楽章なんて涙なしには聞けない。最後の作品は32番だが、繊細なメロディーではじまる二楽章が、徐々に形を変えていきながら発展し、ついに踊り跳ねるようなパターンに入る時の解放感といったら!ベートーベンはこの時にはとっくに耳が聞こえなくなっていたけれども、音符を書き付けながら心は踊っていたと思う。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC32%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

こういう楽譜の分析は大好き。たまに音楽学者になればよかったと思うときがある。
高校生と大学生の時、地域の図書館で楽譜を借り出して、音楽をかけながらよく見ていたものだ。
僕は音楽を聞けばすぐ楽譜が頭に浮かぶほど耳がよくないので、楽譜をみながら、うわーブラームス
って真面目なんだなあ、頑張ったなあ、とか細部の工夫を発見して喜んだりしていた。
懐かしいねえ。