グールド

http://www.youtube.com/watch?v=g7LWANJFHEs

紹介するまでもないけど、異端にして最高峰の演奏。圧倒的な遅さ、楽譜に書かれていないトリルの使用、ジャズのような節回し、そして何よりも本人のうめき声とつぶやき。ふつうだったらマイナスになるような要素が積み重なって、どうしてこんなに迫真の演奏になるのだろうか。全てが間違っているようでいて、これしかありえないという演奏だ。変奏の一つ一つが新たな生まれ変わりのように現出し次々に消えていく。これを聞く体験も常に新しい。グールドの演奏というのは頭の中に整理されて記憶として蓄積されることがないのだ。

浅田彰モグラのようなと形容した、独特の背を曲げた姿勢のせいで、手は非常に高い位置で鍵盤に向かっている。低すぎるイスは、彼が常に持ち歩いていたもので、これ以外では演奏しなかったらしい。

顔と手がときには5センチくらいにまで接近している。口元を見て欲しい。歌っている。グールドを愛するとき、私はグールドがこんなにまで音楽を愛していたことを愛するのだ。

http://www.youtube.com/watch?v=qB76jxBq_gQ

こちらは若き日のグールドの練習風景。