Cather、水村
The Professor's House (Virago Modern Classics)
- 作者: Willa Cather,A. S. Byatt
- 出版社/メーカー: Virago Press Ltd
- 発売日: 1981/07/27
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: 水村美苗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11/27
- メディア: 文庫
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で、この恋愛小説が『嵐が丘』に似たパターンを持っていることを「私」が語っていて、確かにそれはそうなので、「女中」が語りだす「小田急線」というセクションでは、読み始めた瞬間からネリーのエコーが響いているのがはっきりと感じ取れる。その手綱捌きが絶妙で、本当に模倣の天才的な人だと思う。模倣といってもポストモダン的にパロディーをやっているという感じが全然なくて、この小説はどこまでも真剣に恋愛小説、なのだ。『嵐が丘』だけでなく、春夏冬の三姉妹は谷崎の『細雪』の三姉妹の影を背負っているという感じもしたのだけど、どうだろう。まだ上巻読んだ所だけど、著者に深い敬意を感じました。
追記。そうそう、最初の方にNew Year Partyの場面があるのだけど、これが素晴らしい。じつはパーティーが書ける日本の作家というのはほとんどいない。パーティーというのは大抵色々な人物が一気に登場して、さまざまな人物関係が明らかになるような場面だから、ヨーロッパ文学では腕の見せ所みたいな所で特に女を美しく描くことに力が入るんだけど、日本文学はその辺わりと内向的で、パーティーなんていう俗っぽい所にはいかないような主人公が多い。大江ではたまに文学系のパーティーが書かれていたりするけど、そういえば村上春樹の主人公も全然パーティーに行かない。バーは結構出てくるんだけどね。もちろん、ヨーロッパ文学でもパーティーの場面を書かない作家というのはいて、代表選手はカフカとドストエフスキーのような気がする。